◆不動産の活用に「これがベスト」という提案はあるのか?

◆不動産の活用に「これがベスト」という提案はあるのか?

by 山田達也 2020年10月22日  ≪Column vol. 1≫

※このストーリーは事例をもとにしたフィクションです。

親から相続した不動産、姉妹3人で共有財産として所有していました。全ての土地建物が3分の一の持ち分で共有登記です。皆さん高齢になられて今後の事についてご相談がありました。

物件は3箇所に分かれていました。

□物件1:一つは皆さんがお住みになっていたご実家、空き家の状態で毎月一回皆さんが集まって掃除、風通しをしています。お庭も広く植木の手入れや雑草取りなどかなりの労力と費用が必要でした。

□物件2: 二つ目は商店街の一角にある貸地、メインの通りと裏側の路地側に面した土地とに分かれていました。借地人の方は7名です。

□物件3: 三つ目の物件はやはり貸地ですが、二つ目の物件より土地が広く道路が2方向にありました。借地権者は8名で一部の敷地は月極駐車場として運営していました。

以上の3物件の管理を今まで3人で全て行っていました。かなりの労力が必要なのは当然です。ここで今後の方針を決めるうえで重要なのは3名の方がどの様に考えておられるか、自分たちは今後どうしていきたいかを導き出すことです。

結論から申し上げますと全て売却して3名で分配しました。

結果としてかなりの税金を納めることになりました。

このような状況の物件を整理していくためにまず私たちが考えることは

1 共有財産を単独の財産に分ける。

代が変わるにつれ所有者が増えて兄弟から従兄弟、甥と叔母と関係が複雑になってしまうからです。

2 貸地についてはどの様な方法で整理をするか。

底地を一括で専門の業者に売却するか、借地人の方々に各々購入していただくか、又は借地権を購入するかなどいろいろと方法を考えます。

3 新たな事業計画で収益物件を購入するか又は建築するか。

全ての物件を売却して新たに物件を購入するか、一部を売却して一か所に賃貸マンション等の収益物件を建築するか。その過程で共有財産を単独の財産になるように計画するかなど考えます。

お客様にいろいろと検討していただき、判断していただくにはこのようことを整理してお伝えしなくてはなりません。いくつかのパターンの概要についてそれぞれ事業計画を作成し、長所、短所やリスクも含めて理解してもらうことが大事です。

このご相談についてはお客様と何度も打合せを行いました。いろいろな事業計画の中で選択されたのは全ての物件を売却して分配する。事業用の買い替え資産の購入はしないとの結論でした。いろいろな方法がある中である意味では一番分かりやすく、また最も税金を多く払う方法です。

私たち不動産業者にしてみるとほんとにこれでよろしいのですか?

という内容の事業計画です。事業計画というか単純に売却するということです。

しかしながら今まで何十年にもわたりお客様が運営管理をされてきてのご判断ですからそこは大事に受け止めなくてはなりません。

物件1は売却するために造成工事の計画図を作成して少しでも条件が良く売却できるように工夫をしました。

物件2は4名の借地人の方々にはそれぞれ土地(底地)を購入していただき、裏側の路地に面した3か所の貸地については、一括して土地を業者に購入してもらいました。

物件3はかなり時間がかかりましたが、一方向に面した3人の借地人の方々には土地(底地)を購入していただき、駐車場用地を含めた借地人の方々には逆に借地権の購入を申し入れ、難しい方々には等価交換を含めでマンションの購入を提案しました。この物件は奥行きがあるため分譲地としての計画よりも一括してマンション用地で売却した方が価値があると思われたからです。

このような形で全ての物件を整理したうえで売却が完了したのは、計画が決まってから3年後でした。特にそれほどの急ぐ事情がなかったため、なるべく土地の価値が高まるように計画を立てて売却することができました。

お客様との3年に亘るお付き合いの中で、うれしかったのは私たちにすべてお任せいただき、信頼して対応していただいたことです。お客様から任せて頂くと当然プレッシャーもありますが、何とか良い形で完了させたいという気持ちも湧きますし力も頂けます。

3人のお客様からは全ての物件売却が完了した後に、「本当に良かった。自分たちが生まれ育った実家を含めて全てを売却することについては、三人それぞれ様々な気持ちがあったがこれが一番と思う。長い間ありがとうございました。」と話されました。

不動産の活用にはこれがベストの提案だということがない事が良く分かりました。

お客様が満足される、幸せな気持ちになれることがベストだと思います。

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