賃貸住宅における原状回復のガイドラインの基準は平成10年に作成され、その後平成16年、平成23年に裁判事例やQ&Aなどの追加がされて改訂がおこなわれました。
今もなお、原状回復時のトラブルが多発しているようです。国土交通省住宅局参事官は令和5年に「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に関する参考資料を発表しました。この資料はとても解りやすいです。インターネット上に資料がでておりますので是非上記タイトルで検索してみてください。
令和5年3月国土交通省住宅局参事官「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に関する参考資料より引用 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001611293.pdf
退去時にトラブルになりやすいポイントのひとつとして、右図のように入居時点のクロスが張り替えられていたのか(いわゆる新品なのか)それとも、既に経年していたのか?です。借主の故意過失による損耗があり借主に原状回復義務があるという判断の場合でも、クロスの場合耐用年数が6年とされているので、新品の場合は、例えば3年で退去した場合は張替えが必要な箇所の50%を借主が負担することになります。
しかし、入居時点でのクロスが張替えられていない場合はクロスが張り替えられてから何年経過しているのか?ということを考慮しなくてはいけません。
退去時のクロスが6年をすぎている場合は、残念ながらガイドラインでは借主負担は1円(≒0円)となります。しかし、だからといって、例えば落書きとかタバコのヤニとか、酷いカビを発生させた場合、退去時に耐用年数を過ぎてはいるが、もしタバコによる損耗がなければ次の入居募集ができる(つまりクロスがまだ使用可能な場合)状態の場合、クロス本体以外の張替え工事作業等一定の費用負担を求めることができるとされています。
最近は社宅代行サービスを提供する会社が、借主代理というかたちで、実際の入居者(契約者は社宅を提供している勤務先法人)に代わり、管理会社とこういった退去時のトラブルや入居中の更新契約などの業務を行います。社宅代行会社の担当者はプロですから、退去時には必ずこのガイドラインに従った精算を求めてきます。賃貸借契約書や重要事項説明書には、このガイドラインの抜粋を添付しており、またエスクでは入居前の確認と退去後の立会はすべて社員が行っておりますが、最近インターネット上の情報などで知識をつけた借主や、社宅代行のプロ達はあの手この手で意見を言って来ますのでこちらも気を引き締めての対応が必要です。