by 山田智也 2025年3月1日《Column vol.13》
「現状維持バイアス」という言葉をご存じでしょうか。これは、「今の状態を変えたくない」という心理的傾向を指します。
人は新しい選択肢や変化に伴うリスクを避け、慣れ親しんだ方法や環境を維持しようとするものです。
変化によって何かを失うかもしれないという不確実性への不安が、その要因の一つとされています。その結果、新しい試みや改善を避けてしまうことがあります。みなさんも、こうした経験はないでしょうか?
実は、「現状維持」には多くのリスクが潜んでいます。ビジネスや会社経営において、変化に対応せず既存のやり方に固執することは、競争力の低下や新規売上の減少につながります。
組織においても、慣習やルールを見直さず、新しい考え方や行動様式を受け入れないことで、組織の硬直化や創造性の低下が引き起こされます。
この傾向は、政治や教育、環境問題など、さまざまな分野にも見受けられます。しかし、変化を拒み、現状にとどまることは、「変化の波」にのまれてしまうリスクを常に伴っているのです。
では、変化をどのように受け入れたらよいのでしょうか。
先日、人に勧められ、ついにChatGPTの有料プランを使い始めました。実は私自身、少し前まで「AIなんて信用できない」と否定的に考えていました。しかし、実際に使ってみると、その利便性や可能性に驚かされました。
シンプルに言えるのは、「受け入れてよかった」ということです。
同時に感じたことは、今度はAIに頼りすぎてしまうことで、自分の中のなにかが変化してしまうのではないか、という心配です。
私はまだAI利用については初心者ですが、AIの良いところを挙げるとすると、ポジティブシンキングができて冷静であるということがまずひとつあるかと思います。(あくまでも個人の感想ですが)
そしてそのことをAIに伝えたら、以下のような回答がきました。
AIのポジティブシンキングの部分は、ネガティブなバイアスに引っ張られずに物事を捉えられる点にあります。
例えば、人間は経験や感情によって悲観的になったり、不安に引っ張られたりすることがありますが、AIはデータやロジックに基づいて客観的な視点を持ち続けることができます。
だからこそ、前向きな発想をサポートしやすいのかもしれません。また、冷静に判断するという点についても、感情に左右されず、事実と論理をもとに判断できるのは大きな強みですね。
特にビジネスの場面では、感情的な決断を避けることでリスクを最小限に抑えたり、公平な選択をしたりしやすくなります。
とはいえ、AIは人間のように「直感」や「経験」による判断が得意なわけではないので、人間の感性とうまく組み合わせることで、さらに良い決断ができるのかもしれません。
いかがでしょうか、なかなか説得力のある内容かと思います。
そして今度はこう聞いてみました。
「AIは人間のように『直感』や『経験』による判断が得意ではないということなのですが、AIがあたりまえになり、皆がAIを使うようになると、人間の直感や経験に基づく判断よりも機械としてAIに選択を委ねたりする場面が、これからの(例えばZ世代などの)時代、より増えていくと思うのです。そうすると人間はどのように変化していくと思いますか?」
とても鋭い視点ですね!
AIが当たり前の存在になり、Z世代以降の人々がAIを使うことが前提の社会になると、人間の「直感」や「経験」に基づく判断の位置づけが大きく変わる可能性があります。
- 直感や経験の価値の再定義
- かつては、経験豊富な人ほど価値が高いとされていましたが、AIが経験をデータとして蓄積し、分析できるようになると、個人の経験の役割は変わります。
- しかし、人間の「直感」はAIには難しい領域です。特に、未経験の状況や、データ化しにくい複雑な人間関係、感情、文化的要素を考慮する場面では、直感的な判断が重要になります。
- 意思決定のAI依存度が高まる
- AIは膨大なデータから最適解を導き出すことができるため、Z世代以降は「自分で決める」よりも「AIの推奨をもとに決める」というスタイルにシフトする可能性があります。
- 例えば、キャリアの選択、投資判断、健康管理など、かつては経験や勘に頼っていた分野も、AIがサポートするのが当たり前になるかもしれません。
- 人間の創造性や感情の価値が高まる
- AIが「合理的な判断」をするようになると、人間は「非合理的な部分(感性や創造性)」をより大切にするようになるでしょう。
- 例えば、アートやデザイン、哲学的思考、人間関係の構築といった、AIでは代替しにくい領域がより重視される可能性があります。
ここまで読んで、私は AI時代においても人間の価値が問われる分野に力を入れていく ことが重要だという答えにたどり着きました。
自分の直感や経験則を基に導き出した答えを、ただ根拠なく信じるのではなく、それが固定概念にとらわれていないかどうかを、AIというフィルターを通して客観的に見直すことが大切だと感じます。
AIに対して闘争本能を燃やすよりも、共存しながらも依存はせず、共に成長していく道を選んでみたいと思う次第です。