by 山田智也 2026年5月25日 ≪Column vol. 28≫
神奈川県不動産のれん会という団体があります。昭和61年に発足した団体で、神奈川県内のあらゆる分野の不動産関連業者が集い、例会や実務者の勉強会を通じて各社のレベルアップを図り、また懇親会で親睦を深めることを目的とした会です。
でも敷居の高い会では決してありません。最年長には90歳代の大先輩から、80~70歳代のまだまだ元気な先輩世代、そして60~50歳代の経験豊富な経営者世代、40~30代の現役バリバリ世代、それから初々しい元気ハツラツの20代の若い世代も例会に参加します。
いわゆる昭和の名残り的な雰囲気もありますが、年齢など関係なく、常に新しい情報や知識を学ぼうと集まるメンバーは考え方が柔軟でほがらかな人たちが多いです。弊社もこの会に参加させて頂いており、また僭越ながら今期は副会長を務めさせて頂いております。
令和8年の今年は、創立40周年の節目の年でした。去る4月にホテルニューグランドで記念式典を開催しました。政界や業界団体から大変多くの御来賓をお迎えし、さらなる会の結束を深めることができました。「のれん(暖簾)」という言葉には、単なる看板以上の意味があります。
「のれんを守る」「のれん分けする」などの言葉が示すように、先人が築いた信用を守り、またそこから独立して技術や信用を受け継ぐことの歴史や美学がそこにはあります。「のれん」とは、本来、店先に掛かる布のことだけではなく、信用や人とのつながり、その積み重ねそのものを指す言葉です。
40年という年月の中で、不動産を取り巻く環境も大きく変わりました。バブル景気の崩壊、人口減少、相続問題、空き家問題、そして近年の建築費や地価の上昇。時代が変わるたびに、不動産業界もまた、その変化の波を受け続けてきました。実際にその時代を生き抜いてきた先輩方からの「生」の声を聞くと大変興味深いです。1980年代は金利は5%~8%もありました。(いま、またそこに向かっていくのかと思うとちょっと怖いものを感じますが⋯)当時は円高の影響もあり、日本の有名企業がニューヨーク・マンハッタンのビルを次々と購入し、再開発にも関わっていました。
日本国内でも不動産バブル期に多くを稼ぎ、バブルが弾けて多くを失いながらも、今日まで会社経営を続けたみなさんのご苦労は、バブルを知らない世代にとってはスケールが大きいお話です。そして、そういった実体験に基づいた、とても人間くさいお話こそが魅力的でもあります。
入会当初、まだ私が馴染めない時に、歴代会長のとある先輩が例会でこのようなお話をされました。「この会が何のためにあるのか、その存在意義をみんなで考えていきたい。」そのシンプルで、なおかつ直球の言葉が響きました、そして「もう一歩前に踏み込んで、関わることが大切。」というメッセージもありました。参加者の当事者意識を高めることは言葉ではいくらでも言えますが、どのタイミングで、どういう立場の人が、どのように発言をするかで影響力は大きく変わります。
これをきっかけに、会に参加する温度が変わりました。そして数年後に、会の運営で親睦推進を担う役割を頂きました。いわゆる宴会の幹事です。コロナ禍もあり大変な時期もありましたが、親睦会やゴルフ、トレッキングなどのさまざまな機会で集まることを重ね、一緒に過ごす時間を創出し、会員同士が少しでも交流を深めることができるような取り組みをして来ました。
皆それぞれが会社の仕事がある中で、外部の任意団体の活動にどこまで参加ができるのか、その意味を、単純に営業的な「仕事につながる」ということだけでなく、お互いの信頼関係を築くことの大切さをどうやって浸透させていくか。そういったことを念頭に置き活動を続けて参りました。
お互いに、顔と名前を覚え合い、人となりがわかり、杯を重ねて、その結果が安心できる取引につながった事例もありました。会には40代の半ばになった私のことを、下の名前で呼んでくれる先輩方もたくさんいます。(ちなみに妻は「花ちゃん」と言われてます。)また、同じく下の名前やあだ名で呼ばせてくれる先輩方もたくさんいます。会の存在意義を考えるうえで、とても大事なことかと思います。

神奈川県不動産のれん会の会員各社が一致協力して不動産取引を通して社会貢献する為にかかげる目標です。
一. 会員は常にのれんの尊厳を守ります。
一. 一店の会員への相談には全会員がお應えいたします。
一. 会員は御客様の利益を守り業法に基いて正しい取引を行ないます。
一. 会員は御客様の信頼を得ることを旨とします。
一. 会員は常に新しい知識の習得に励んでおります。
これが、のれん会が掲げる「のれんの誓い」です。まるで、空手道の「道場訓」のようなものですが、シンプルな言葉のなかには、40年前も、そして今の時代にも大切な行動指針があると思います。
「尊厳を守る」というのはその人や物事が、尊ばれるべき価値や品位を守るということ。これは社会にも通じるものがありますね。家庭でも、学校でも、職場でも、所属する趣味のチームやサークルでも、こうした価値観は、AIだけでは学べないことかと思います。
そして、この「のれん」は一人では守れません。困難な状況のときでも、協力して共に歩む仲間や家族は必要不可欠です。1987年9月に創業した弊社も、皆様のおかげさまで、いよいよ来年、創立40周年を迎えます。引き続き、ひとつひとつ邁進したいと思います。

