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パンとサーカス、ラテンとサルサ

Posted on 2026年2月26日 by TY

by 山田智也 2026年2月24日 ≪Column vol. 25≫

 オリンピックが閉幕しました。日本選手団は過去最高のメダル獲得数。NHKの生放送で閉会式を観ました。さすが芸術の国、イタリアです。「躍動する美」をテーマに掲げたセレモニーの演出は、オペラ、バレエなどが融合したクラシックでモダンな素敵なパフォーマンスでした。

そしてDJが登場し、大音量のダンスミュージックに選手団が踊り始めます。海外の選手はノリノリで、日本の選手はすこしぎこちなく、なんとなくリズムにのっている感じ。文化の違いでしょうか。でもみんな楽しそう。アーティストはアメリカ出身のユニット「メジャー・レイザー」。

メンバーのディプロは学生時代日本にも住み、恵比寿でウェーターもしていたそう。「みんなで空に向かって、あかりをつけよう。ピース&ユニティー!(平和と連帯)」メンバー自らスマホを出してライトをつけます。

フィナーレは会場全員がスマホのライトをつけて一緒になってウェイブします。超歴史的な会場に、とても今らしい情景です。

会場はユネスコ世界遺産の古代円形劇場「ヴェローナ ローマ劇場」(Arena di Verona)紀元1世紀に建てられた古代ローマの野外劇場です。建設された当時は、剣闘士競技(グラディエーター)が繰り広げられていたこの場所でのオリンピックセレモニー。この約2,000年間に世界は、そして人類は、想像を超えるくらい、ものすごい変化を成し遂げたのだなあと改めて思います。

当時は貧富の差が明確で、力により隣国を征服したローマ帝国の権力者は食料配給と娯楽で民衆の支持を得たと言われております。時の風刺詩人によって「いまや市民が望むのはパンとサーカスだけだ」と皮肉を込めて、古代ローマ時代の政治を批判しました。

グラディエーター(剣闘士)の起源は紀元前3世紀頃の現在のイタリア半島にあるとされ、有力者の葬儀の際に、死者を弔うために戦わせたのが始まりとされています。古代ローマの時代となり儀式だったものが次第に娯楽へと変化します。時の有力者たちは民衆の支持を得ようと大規模な興行を行います。

この時代に各地で建てられたのがコロッセオ(円形闘技場)です。数万人の観客が剣闘士同士の戦い、人間対猛獣の戦いなどが繰り広げられました。剣闘士は戦争捕虜、奴隷、重罪犯などが多かったようです。反乱もありました。大規模な奴隷反乱をおこしたことで有名なのはスパルタクス。

古代ローマ時代のトラキア出身の剣闘士で、抑圧された奴隷階層の象徴的存在として大きな影響を与えます。最終的には時の権力者によって反乱は鎮圧され、処刑されましたが、のちに社会的な不条理や権力に抗う自由の象徴として数々の文学、バレエ、映画などの作品のテーマにもなりました。

世界のスポーツの祭典でもっとも興行収入が大きいのはアメリカンフットボール(NFL)のスーパーボウルです。1試合でも約7億ドル(約1,000億円超)もの収入があるとされています。そしてもはや試合と同じくらい有名なのが「ハーフタイムショー」と言われる音楽のエンターテインメント。

そのきっかけは1993年の第27回スーパーボウルに、マイケル・ジャクソンが出演したときから始まります。それ以前は従来マーチングバンドなどが中心となった演出でしたが、マイケルの出演後には「世界最大級の音楽ステージ」へと進化します。2026年のハーフタイムショーのメイン出演者はバッド・バニー(プエルトリコ出身)、史上初めてラテン系アーティストによるスペイン語でのパフォーマンスでした。

TOGETHER, WE ARE AMERICA (我々は、共にアメリカなんだ)というメッセージが書かれたフットボールを手に持ち、バッド・バニーは入場。

ミュージカルのような演出は、シュガーケーン(サトウキビ)畑からスタートしラテン文化の日常の街なかを表現した会場セットはまるで映画のワンシーンです。そして、サプライズ出演として、なんとレディー・ガガが自身の楽曲をラテンのサルサバージョンに編曲した作品で登場。リッキー・マーティン(プエルトリコ出身)も登場し、情熱的な歌声で会場を魅了。ステージのボルテージも最高潮です。

クライマックスでは、ラテン国家諸国の国旗を掲げた人々が大勢現れ、バッド・バニーと合流し行進します。入場時に手に持ったフットボールを再び胸に抱え「God Bless America!」(アメリカに神のご加護を)と一言。ボールをフィールドに叩きつけ(タッチダウン、ということでしょうか)幕を閉じます。

Lo único más poderoso que el odio, es el amor.
The Only Thing More Powerful Than Hate is Love.
憎しみよりも強いものがあるとすれば、それは愛だ。

終盤の演出シーンでスクリーンに書かれたのは、このメッセージです。スペイン語、英語の順に言葉が現れました。

トランプ氏はこのショーについて、「完全に馬鹿げている。何を言っているのかわからない。酷い、過去最悪だ。」などと酷評します。偉大なアメリカを象徴していないと批判的なコメントを発言。

平和の祭典、オリンピックでは決して見ることのできない、このストレートで懐の深いメッセージ。

私にはこの陽気なラテンミュージックと共に、明るくポジティブに、受け取ることができました。

Category: コラム / column

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